ホーム > コラム > 故郷 京丹後での食への取り組み

故郷 京丹後での食への取り組み

和久傳の故郷、京都の北京丹後市。日本海に面したこの地域は、古くから桑の木が育ちやすい土壌で、桑の葉を好み繊細な絹を紡ぐ蚕を飼って丹後縮緬が栄えました。和久傳は1870年に創業し、丹後の地に絹の買い付けに訪れる商人たちで賑わう料理旅館を営んでおりました。1982年京都市内に移転し、東山の高台寺門前で料亭として歩みを始めた和久傳は、お弁当や惣菜、お菓子など料亭が仕立てるおもたせの販売も手がけ、1993年におもたせ専門店の「紫野和久傳」を開店します。

2020年に節目の150周年を迎えるにあたり、桑畑づくりの取り組みも進めています。

そして2007年、京丹後の地で和久傳は新たな産声を上げます。京都市内の工房が手狭になり、新しい食品工房を京丹後の久美浜に立ち上げるとともに、更地であったその土地に、植物生態学者・宮脇昭氏のご指導のもと、 地元の方々や全国からお集まりくださった方々が従業員とともに植樹を行い「和久傳ノ森」づくりが始まりました。家族代々まで愛され続け、子どもたちに安心して過ごせる自然豊かな風景を残していきたいと、今までに56種3万本の植樹が行われております。混植密植された小さな苗木は、切磋琢磨しながら大きな森に成長し、今では蕗の薹、椎茸、桑の実、山椒、柿、柚子など季節ごとにたくさんの実りをもたらします。

和久傳ノ森の中で榾木を組んで原木椎茸を栽培しています。

森づくりとともに、京丹後 市野々で農薬や化学肥料に頼らない「和久傳米」づくりにも取り組んでおります。堆肥には料亭でお出しした蟹殻が使われます。蟹殻に多く含まれるキチン・キトサンが土の中の微生物のえさとなり、その微生物のはたらきで土を肥えさせ、豊かにします。このような土づくりから始まり、育苗、田植え、人力除草、稲刈り、脱穀、乾燥、籾摺りと、地元の方々のご協力のもと多くのあたたかな手をお借りして育てております。

美味しそうな蟹殻をめがけて動物たちが食べに来ることも。

「和久傳米」のように、京丹後の山々に育まれた清らかな水と、豊かな土に育てられた美味しい作物は、和久傳の商品にも一部使われております。京丹後のお米を甘糀と味噌に仕込み、炊き上げたご飯と合わ せた特製の米味噌糀漬け「丹稲しょ」シリーズや、京丹後の砂地で蟹殻を堆肥に育った青首大根を使った「大根の柚酢漬け」、農薬を使わずに育った桑の葉からつくった「桑のお茶 桑茗」など、故郷 京丹後への想いが、安心安全の食と素材へのこだわりに繋がっています。

農薬は使わないので除草も手作業で行います。